ネイリストになりたいなと考えている方でも、ネイリストの資格について、なんとなく聞いたことはあるけれど良く分からないという方が多いのではないでしょうか?
このコラムではネイリストの資格についてお話します。
この記事の目次
そもそもネイリストとは何をする人?
ネイリストという言葉は、日本ネイリスト協会が設立時に作った造語です。
海外では「マニキュアリスト(manicurist)」と呼ばれていて、アメリカやオーストラリアなどでは国家資格です。日本では「ネイリスト」という言葉の方が定着していきました。
マニキュアリスト(manicurist)のマニキュアというのは、ラテン語でマヌス(manus)=手とキュア(cure)=お手入れをさしています。
ジェルネイルが流行りだして以降、ネイリスト=ジェルネイルをする人というイメージを持たれることが多いですが、
ネイリストの仕事の基本は、お客様の爪を健康で美しい状態に導くことです。
ですので、本来ネイリストというのは、ネイルケアを行い、健康で美しい爪を作ったうえで、ネイルアートや付け爪の施術を行う爪の専門家です。
ネイリストの資格と歴史
日本ネイリスト協会により1997年にネイリストの技能を証明するための「ネイリスト技能検定試験」が初めて開催され、ネイリストの資格制度が始まりました。
その後ネイリストの登竜門としてこの資格は広く認知されるようになっていきます。
2008年には、検定試験資格が有する専門性、公益性、社会的な価値をさらに高めるために、日本ネイリスト協会(JNA)が実施していた検定試験事業を
検定試験の運営と資格認証を専門に行う機関として新たに公益財団法人日本ネイリスト検定試験センター(JNEC)」が設立されました。
1997年に始まったネイリスト技能検定試験の受験者数は、令和3年10月現在、累計で約90万人となっています。
ネイルの検定試験としては最も多く開催され、有資格者も約56万人と、ネイル業界で最も権威と歴史のある資格です。
ネイリストの資格の種類
ネイリストの主な資格として2つあります。
公益財団法人日本ネイリスト検定試験センターが開催するネイリスト技能検定試験と日本ネイリスト協会が開催するジェルネイル技能検定試験です。
ネイリスト技能検定試験
ネイリスト技能検定試験は1級2級3級に分かれていています。
すべて段階受験です。
ー合格基準ー
1級:国際ライセンスと同等レベルで、理論の理解やネイル技術が申し分なく、プロとしてサロンで活躍できるレベル。
2級:サロンなどに入って働ける技術レベルで、ネイルケア、チップ&ラップ、アートをサロンワークで実践できること。
3級:初級レベルで、ネイルケアの手順が正しく行えること。
ジェルネイル技能検定試験
ジェルネイル技能検定試験は、初級中級上級に分かれています。すべて段階受験です。
ー合格基準ー
初級:ジェルネイルに関する基礎レベルを持ち、カラーリングの基本を行えること。
中級:ジェルオフ、グラデーションカラーリング、短いスカルプチュアをサロンワークで実践できるレベル。
上級:ネイルケアとカラーリング、ジェルスカルプチュアをプロレベルで行えること。
その他の資格
その他の資格としては、JNAネイルサロン衛生管理士、JNAフット理論検定、JNA認定講師があります。
JNAネイルサロン衛生管理士
日本ネイリスト協会が制定した「ネイルサロンにおける衛生管理自主基準」を、ネイルサロンの現場で正しく活用していただくための資格制度です。
JNA認定校で実施される講習会を受講し、確記テスト(筆記)に合格した方に本資格を付与されます。
JNAフット理論検定
ネイルサロンで広く取り入れられているフットケア施術。
ネイリストがネイルサロンで正しい施術を行うために必要とされる理論の修得を問う検定試験です。
JNA認定校で実施される講習会を受講し、確記テスト(筆記)に合格した方に本資格を付与されます。
この試験はお客様にネイル施術を行うための基本的な技術と理論を修得している方を対象に行います。そのことを示す資格として下記のいずれかを取得していることが条件となります。
- ネイリスト技能検定試験(JNEC):3級以上
- JNAジェルネイル技能検定試験:初級以上
- JNA国際ネイリスト技能検定試験:3級以上
※但し日本国内に合否通知送付先住所のある方。
JNA認定講師
JNA認定講師とは、毎年実施される資格試験に合格することにより、与えられる資格です。
JNA認定講師は、日本ネイリスト協会の講師会のメンバーとして広い志を持ちネイルの普及と発展に努め、イベント実行委員、検定試験の試験官、コンテストの審査員、各セミナーを担当して自らの意思により活動し貢献しています。
受験するには、JNA認定校を卒業し、ネイリスト技能検定試験すべての級、JNAジェルネイル技能検定試験すべての級とネイルサロン衛生管理士、フット理論検定の資格を取得し、ネイルサロンでの実務経験1年以上が必要で、JNA主催のコンテスト出場経験も必要です。
*JNA認定校以外の一般ネイルスクールを卒業の方は、JNA認定校の卒業資格が必要となります。
資格がないとネイリストになれないのか?
実はネイリストになるのに必ずしもネイリスト技能検定やジェルネイル技能検定の資格を取得しないといけないということはありません。
ネイリストの資格は、日本では国家資格ではなく、あくまで「民間資格」ですので、極端なことを言えば、明日にでも「私はネイリストです」と宣言すれば、法律的になんらの問題なくネイリストになれます。
ですが、もちろんネイルの勉強を何もせずにネイリストを名乗る方はいないと思いますし、あくまでも法律上そういう解釈ができるということです。
ネイルに関係する様々な資格の取得は、ネイリストとして活躍する上で自身が習得してきた知識や技術の証明として、お客様や就職先に客観的にネイリストの技術力を判断できる材料として役立ってくれます。
民間の資格とはいえ、これからあなたがネイリストとして仕事をしていきたいと考えているのであれば、資格を取得しておくことは必要なことであると言えます。
資格さえ取ればネイリストとして仕事ができる?
ここまでで資格の種類や資格取得の必要性などのお話をしてきましたが、ネイルの勉強を始めるときに気をつけてほしいことがあります。
それは、学ぶ順番です。
入学してすぐから資格取得ための勉強や練習に入ると受験のための勉強になってしまうからです。
受験のための勉強は、試験の課題を時間内に終え合格を目指す内容になっていますが、実際のところ、ネイリスト技能検定の内容は現状のサロンワークとは違うのです。
検定試験では、モデルを用意し、事前にお手入れをし爪がキレイな状態で受験します。
ですがサロンでは、どんなお客様がいらっしゃるのか分かりません。
爪や肌の状態を見てトラブルの有無を確認し、お客様の要望を伺い、ネイルの施術をすることになります。
資格を取得することと、実際お客様にネイル施術できるようになるは大きく違うのです。
学ぶ順番が大切と言ったのは、最初に資格取得だけを目的にしてはいけない。ということです。
以前から私はこのように考えていましたが、数年前に確信したできごとがありました。
ネイルサロンの面接でのことです。
履歴書に記載されていた資格はネイリスト技能検定3級2級1級取得、ジェル初級、中級、上級取得、他にはネイルサロン衛生管理士も取得されていました。
ネイリストの資格はすべて取済でしたので、面接と技術面接に来ていただいたのです。
面接を終え、いざ技術面接が始まった時に
「全ての級の練習は一人の方がモデルでその方の爪しか触ったことがない、検定のことしか習ってないから自信がない」と言い出したのです。
この方も資格取得までには大変努力をされてきたと思います。そこはもう間違いないです。
ですが、残念なことに資格だけはネイリストの仕事はできません。
こういったことは、なにも極端な例では無く、資格取得のための勉強と練習しかしてないわけですから当然といえば当然です。
現に、当スクールに入学される方の3割は資格取得後や開業された後、出来ないこと分からないことが不安になり学び直しとして入学されています。
もちろん当校でも資格取得はできますし、取得することをおすすめしています。
ですが、それはネイリストの技術力を判断できる材料として客観的な裏付けのためものとして考えています。
これからネイリストを目指すかたへ
あなたがネイリストを目指す目的はなんでしょうか?
ネイリスト資格の取得ですか?
違いますよね。
ネイリストになってやりたいことがあるはずです。
ネイリストとして就職したい。
ネイルサロンを開業したい。
そしてその先には
「お客様に喜んでもらいたい」
「お客様に笑顔になって欲しい」
「お客様の悩みを解決したい」
そういった想いがあるのではないでしょうか?
だとしたら資格取得だけを目的にしてしまっては遠回りになってしまいます。
サロンで働く上で必要な技術と知識を習得してから資格取得を目指しましょう。
三重県出身。1995年にネイルサロンcire nail space創業、同年にBe creation NAIL ACADEMYを開校。開講より約1000名の受講生に指導。
「あなたに任せたい」と言ってもらえるネイリストの育成に力を注いでいます。